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スプリントをふりかえる最小の問い

チームがスプリントをふりかえるための最小の問いは2つでいい。それは「われわれはこのスプリントで幸せだったか?」そして「どうすれば次のスプリントではもっと幸せを感じられそうか?」だ。

幸福度の計測

スクラム 仕事が4倍速くなる”世界標準”のチーム戦術 | ジェフ・サザーランド

「幸福度の計測」というふりかえりの手法は、シンプルな問いからチームの課題にかかわる本質的な議論に発展させることができる。

質問する項目は4つ。これにチームの全員が答える。その後、それぞれの解答をベースに議論をして「次のスプリントで改善すべきひとつのこと」を決める。

  • 自分の役割について、このスプリントの幸福度を1〜5で表すとどうか?
  • 会社全体について、このスプリントの幸福度を1〜5で表すとどうか?
  • なぜそう感じるのか?
  • 何をひとつ変えたら、次のスプリントでさらに幸せを感じられそうか?

視座を動かすトレーニング

この手法がすぐれている点は、幸福度という主観的な指標を2つの視座で考えることを求めるところだ。

まず「自分の役割の幸福度」を考えるうえで、「そもそもこのチームにおける自分の役割は…」と考えることになる。役割がはっきりしていなければ何が幸福で何が不幸なのか判断がむずかしい。まずはチームの中で自分は何を期待されているのかについて内省できる。

次に、「会社全体の幸福度」を考えるうえでは、自分やチームの成果は会社全体の成果とどのように結びついているのかに意識を向けることになる。自分たちは幸福でも会社が幸福でなければ局所最適化に陥っているといえる。逆に、会社が幸福そうでも自分たちが幸福でないときにも何か課題がありそうだと感じられる。

ビルドトラップを防ぐ

そのスプリントが計画通りに進んで目標を達成できれば、チームの幸福度は高くなるだろう。しかしそのアウトプット(インクリメント)が会社の成果(アウトカム)として価値を生み出していなければ、チームはビルドトラップに陥っている。

2つの視座を行き来する習慣がつくことでプロダクト開発がチームの自己満足になってしまうことを防ぐこともできる。

仕事を楽しく保つ

そして「幸福度の計測」の最大のポイントは、生産性や業績といったビジネス的なパフォーマンスだけでなく、それを生み出す 「ひと」の状態 を計測しようとする点だ。

どれだけ成果を効率的に生み出せていても、負荷が大きくハードワークが強いられているようでは幸福度は上がらない。また、認知負荷が高く不安定で、びくびくしながら改修しなければならないシステムや技術的負債があっては、これも幸福度を下げる。さらに、割り込み作業や問い合わせ対応、障害対応などいわゆるtoilが増えると、楽しく働けないだろう。

逆に、新しい手法やツールを試してみたり、これまで負担になっていた開発上の障害を取り除く改善ができれば幸福度は上がるだろう。

チームの成果は顧客への価値だが、そこで働く「ひと」はその成果だけで幸福でいられる機械ではない。メンバーが幸せで楽しく仕事をつづけながら、同時に顧客も満足させるようなチームを作るには、「幸福度の計測」は欠かせないものである。逆にいえば、チームの幸福に顧客を満足させることが含まれているのなら、幸福度さえ計測できていればふりかえりとしては最小限のものとして機能するはずだ。