承前:
- 約束とは、未来における行為の宣言と、その承認である
- 他者がどのように行為するかは、自己にとって不可知の最たるものである
- 約束によって人は、本来はもっとも不確実なものである他者の行為を、未来について考えるための前提にできるようになる
- 「明日は9時にどこどこに待ち合わせ」という約束がなければ、相手と会えるかどうかは不確実性が高い
- 相手のこれまでの習慣や明日のスケジュールについての知識など、過去に得た情報だけが推論の根拠となるが、過去の事例を根拠とした推論はどこまでいっても確かなものにはならない
- 約束は、未来についての真の命題(推論の前提にできる事柄)を無から生み出すことができる
- 人びとの間に約束がなければ、未来についての推論において、根拠となるのは過去の事例についての知識だけである
- 約束が破られると、その約束から生まれていた命題はすべて偽となる
- 偽の命題を前提とした推論はすべて意味をなさない
- 約束を反故にするということは、その約束を頼りに未来について考えていたすべての人のすべての推論・計画を破壊することである
- 今だけでなく未来の生活について、行きあたりばったりではない見通しを立てるためには、約束は不可欠のものである
- それゆえに、「約束を守る」ということは、持続的な人間関係において欠かすことのできない態度である
- ある他者との間で交わした約束のひとつが反故にされたとして、その相手が他の約束については守ってくれると信じられる根拠はなにもない
- そもそも「約束を守る」というのがその人間関係に対する態度から生まれる行為であって、約束を反故にしてもよいと判断された人間関係の上で他の約束が守られると考えるのは矛盾している
- 優先順位とは、「その順に優先して選択する」ことの約束である
- 「優先して選択する」とは、優先されたものがあるうちは、劣後されたものを選択しない、ということである
- 優先順位に従わずに行動するということは、約束を反故にしているのと同じである
- つまり、将来に向けたあれこれの見立てを根幹から崩す行為である
- 優先されるはずのことに資源が不足しているにもかかわらず、劣後されるはずのことに資源が割り当てられているとしたら、その優先順位は無視されている
- 同列の優先順位というものは背理であり、意味をなさない
- なんらかの選択の必要があるから優先順位があるのであって、選択しなくてよいのであれば優先順位そのものが無意味である
- もし選択するときになってどちらかを選べるのなら、それはもともと同列ではなかったのである
- 同列の優先順位において選択が迫られれば、選べるのは優先順位の再定義か、選択を放棄するかのどちらかである
- 「どちらも」は選択ではない
- 意味をなさない優先順位は、何の約束にもならない